生態系のカギを握るキーストーン種とは

生態系とは、捕食・被食の関係から成り立つ、ある地域における複数の生物たちの関わり合いのことです。森林や海でももちろん、我々の生活圏内にも生態系は構成されています。既に成熟している生態系は安定しており、通常は気候変動や外部から強力な生物種が来ない限り大きな変動は起こりません。これは、生態系の構成要素がひとつ(1種)だけではなく複数から成り立っているために、個々の要素の増減がそこまで大きな比重を占めないためです。しかし、なかにはその一種が死滅するだけで、その地域の生態系全てが破たんする、という重要な生物種もいます。そのような生物種のことを「キーストーン種」といいます。
 キーストーン種が見つかったのは、海の潮間帯における上位の捕食者である人手を取り除く、という実験からです。ヒトデがいなくなることで、ヒトデのエサであったイガイが大量に繁殖しました。その結果、イガイがその海域の資源を食いつぶし、ほかの種が滅んでしまったのです。つまり、ヒトデの存在がこの生態系を維持するうえで欠かせない存在であったと言えます。また、19世紀に乱獲や捕食により、ある海域のラッコの個体数が絶滅寸前まで減少しました。その後、ラッコが主に食べていたウニが大量繁殖してしまい、ケルプという藻類がウニによって食べつくされてしまいました。その結果、ほかの生物の住処や栄養補給の場がなくなってしまい、その海域は生物がすめなくなってしまったのです。この場合、ラッコがキーストーン種として海域全体の生態系を成り立たせていたと言えます。
このようにキーストーン種の個体数は非常に重要で、その一種が滅ぶということは、生態系全体が滅ぶことを意味します。そのため、人為活動によりある種の生物に影響を与えてしまうと、それがその生態系全体に影響を与えうるのです。特に海にいる固着生物などは、環境が変動しても逃げることができないので、キーストーン種の影響に敏感に反応してしまいます。
生態系の維持を考える際に、キーストーン種の把握は非常に重要です。しかし、生態系自体が様々な要素から成り立つ複雑系ですので、簡単に把握することはできません。ヒトデは人間の目からは目立たない存在ですが、その生態系においては非常に重要であり、滅亡した後にキースト-ン種であることが分かった、という例が多いのです。学術的にキーストーン種という考え方は非常に重要な考え方ですが、やはりどの生物種も人間の都合で滅亡させることなく、生態系全体を維持していくという考え方が大切です。