石油の流出と海洋環境

我々の生活に欠かせない石油。
この石油は原油として採掘された後に、タンカーで輸送され、精製加工されます。タンカーの座礁事故や採掘中の事故などによって海洋中に石油が流出することがあります。これらの事故は大規模な環境汚染につながり、付近の生態系や人に甚大な被害を及ぼします。

皆さんは、テレビなどで黒い油まみれになった鳥の映像を見たことがあるでしょうか?
石油流出の象徴的な被害としてよく取り上げられますが、ああいった影響以外にも多くの部分で被害が出てきます。

魚のえらなどに付着した油はエマルジョン(乳化作用)化し、機能不全を引き起こし死に至らしめます。また、稚魚やランなどは酸い環境の影響に敏感であるために、石油が流出するとこれらの生育段階の生物はすべて死滅してしまいます。

死に至らない魚でも、一度体内に取り込まれた油はなかなか排出されませんので、油臭さや不快な味になり、漁師にとっては大きな痛手となります。

油膜の張った海域にいる海鳥は、羽への油分を補給するために好んで飛び込んでしまうものもいます。こういった海鳥は油まみれになってしまい、体温の維持や、遊泳・飛翔ができなくなってしまい死に至ります。

また、石油で汚れた羽をくちばしで繕おうとするために、油を摂取してしまいます。その結果、細胞毒性や内臓の機能不全に陥り、直接死ぬ場合もあれば動きが鈍くなり外敵から身を守れずに死に至る場合もあります。

また、沿岸に押し寄せた原油は広い範囲に油膜を張り、移動能力の乏しい海岸息の生物に甚大な被害を及ぼします。

岩に付着した貝類や藻類はダイレクト影響を受ける他、環境の変化に弱い甲殻類も死滅したり着臭したりします。
また、海水浴や釣りもできなくなるため、ヒトへの影響や観光産業への被害も甚大なものになります。さらに沿岸にある電力発電施設も、冷却のための水を海から取水しているため、操業停止になる可能性もあります。

このように石油の流出は自然界、産業活動に著しい影響を与えます。一度流出してしまった石油は海洋循環の作用で分散させるか、人の手ですくいだしたり油分散剤を利用して分解する必要があります。

沿岸域の石油は地元のボランティア活動によって除去作業が行われます。この際に石油を吸引してしまい、シンナー中毒と似た作用に襲われる人もいます。
単なるゴミ拾いとは違う対策が必要になります。油分散剤による除去は固まった油を海水中に分散させる作用があり、自然循環による油除去作用を促す効果があります。

しかし、油分散剤自体の毒性も懸念されているため、代替対策として油分解バクテリアを利用する研究も進められています。