赤潮と青潮

 ニュースで「赤潮大発生」などとよく耳にすることはありますが、赤潮とは何なのでしょうか?
 赤潮の正体は、大量発生した植物プランクトンです。

海水中に存在する植物プランクトンは、水に含まれる栄養を吸収することで成長・分裂します。生活排水や工場からの排水の中にはプランクトンの生育に必要な窒素が豊富に含まれます。そのため、一度に多量の排水が流出すると、その海域では植物プランクトンが大発生することになります。

発生したプランクトンは周辺の栄養や酸素を根こそぎ吸収してしまうため、他の生物にとって大ダメージになってしまいます。また、養殖業者にとっても自分たちの育てた業界類に大きな影響を与える赤潮は、大きな悩みの種となっています。

 青潮は、発生した植物プランクトンによるものです。植物プランクトンは死後、海底に沈み、他の微生物の働きにより分解されます。その際に酸素を消費するため、海底の海水が酸欠状態になります。
酸欠になった海水環境では、嫌気性細菌の一種である緑色硫黄細菌というバクテリアが繁殖します。硫黄細菌が生成する硫化水素が海水循環の働きで表層まで上がってくると、硫化水素が酸化されます。
この硫黄酸化物が懸濁した海水が青白く見えることから「青潮」という名で呼ばれるのですね。青潮は硫化水素が元ですので、独特の腐敗臭を伴い、養殖業者や海生生物に大きな影響を与えます。

 赤潮自体は昔から見られてきた自然現象なのですが、地球温暖化による水温の上昇、排水の増加などの要因によって、赤潮が各地でみられるようになってきました。
一度発生すると、周囲の生態系に大きな影響が出ます。長い場合には数年にわたって、その海域の漁獲高が激減するケースもあるようです。

また、一度発生した赤潮を解決する有効な手段は見つかっておらず、現状では富栄養化する原因を予防するといった対策しかありません。

 重金属や有害物質が含まれていないからいいだろうと、排水を捨ててしまうことが赤潮の発生につながることもあるのです。

下水処理技術の向上により、ほとんどの成分は分解されるようになりました。大切なのは、その地域で定められた捨て方をきちんと守り、環境へそのまま流される量を最小限にすることです。

また、一見すると赤潮と温暖化は関係がないように思えますが、実は背景のメカニズムを知ることで両者の繋がりが見えてくるのです。海を大切にするエコな生活を心がけることは、地球全体を守ることにつながるのです。

重金属と海洋汚染

 生物には生きていくのに必要な必須元素があります。「重金属」といわれるグループにも必須元素は含まれるのですが、中には少量で生物に毒性を与える元素もあります。なかでも、水銀や、カドミウムや鉛といった元素は、生物体内で蓄積され、深刻な健康影響を及ぼします。

 工場や家庭から排出される汚染水の中に重金属が含まれていると、速やかに拡散します。それと同時に、重金属は海水中でイオンとなり、生物に取り込まれやすい形態になります。

イオンとなった重金属は、微生物や植物は摂取した海水からイオンを吸収し、体内に蓄積します。これら生物を捕食する高次の生物では、低次の生物体内中より高濃度で蓄積します。これが生物濃縮です。

 一個体中の毒性元素の濃度は低くても、低次の生物を多量に捕食することによって、高次の生物体内では著しく高い濃度が検出されるようになるのです。我々が口にするような大きさの魚介類では、相当な濃度の重金属が蓄積されています。

 我々の体内に入った重金属元素は、肝臓や腎臓といったろ過や解毒するための器官に蓄積します。少量であれば、無毒化した後に体外に排泄されるのですが、ある濃度以上になると機能不全などの健康影響が出てきます。

特に水銀やカドミウムは毒性が高く、かつては水俣病、イタイイタイ病といった公害を引き起こしました。重金属の恐ろしいところは、放っておいても治らずに、どんどん蓄積していく点にあります。
そのため、重金属の存在する環境で生活している限り、治療しようがなく、悪化の一途をたどることになります。

清潔な環境に移っても、体外に重金属が排泄されるのは長時間必要で、完治はなかなかむずかしいとされています。
 また、重金属による影響は代謝の活発な子供でより顕著に表れます。成長期にある子供は体外からどんどん栄養を取り込もうとするため、毒性のある物質であっても体内に取り入れてしまうのです。

さらに、毒性元素の許容量も大人よりも低いため、少量でも致命的になってしまいます。かつて起こった四大公害でも、大人よりも先に子供や小動物で影響が現れました。

 環境中に放出された物質を回収するのは極めて困難です。さらに、自然の作用により除去されたといっても、それは汚染が別の土地に移ったということにすぎません。低濃度では毒性はなくても、生物濃縮などにより容易に致命的な濃度になりうるのです。そして一度高濃度になってしまっては、もう取り返しがつかないのです。

環境問題は予防原則が第一です。あなたも何かを捨てたり、環境中へ何かを放すときには、その後の影響はよく考えてから捨てるようにしましょう。一度環境中へ出てしまうともう取り返しはつかないのです。

工業地帯と海の汚染

 皆さんは「4大公害」をすべて言えますか?四日市ぜんそく、水俣病、イタイイタイ病、カネミ油症です。これらの公害は、高度経済成長の時代未環境や近隣住民の健康を省みなかったために引き起こされたものです。

 中でも、水俣病は海に工場排水を流したために生じました。熊本県水俣市の工場で会えとアルデヒドを生成する際の触媒として水銀が使われていました。
使用後の水銀は排水として自然界に捨てられ、海の生物の体内に有機水銀として蓄積していきました。水銀は生物の腎臓などに蓄積する有害物質で、生物濃縮されます。

生物濃縮とは、ある成分が生物に取り込まれる際に、低次の生物よりも高次の生物でより高濃度になるという現象です。高次の生物は一般的に大量に提示の生物を摂取するために起こります。従って、自然界に放出された時点では低濃度の物質でも、生物濃縮を通じて、多量に毒物を摂取する可能性があるということです。

 水俣病のケースでも、汚染水に含まれる水銀を微生物が取り込み、微生物を食べる小さな魚や、さらにそれを食べる大きな魚などを通して生物濃縮が進んだと考えられます。そして、この魚を近隣の住民が食べることで水俣病が発症します。

水俣病は、感覚障害、運動失調などの神経被害を引き起こし、重症の場合には死に至ります。人間だけでなく鳥類や猫にも被害が広がりました。工場が排水を流さなくなってからも健康被害は長く続きました。

 このようなケースは水俣病だけではなく、世界中で見られます。一度環境中の放出された有害物質は長期間とどまり、すぐになくなりはしないのです。そのため、大切なことは、まずうがい物質を環境中に放出しないこと。

次に、周辺のモニタリングを定期的に行って、環境の変化が見られないかどうかの確認。最後に、万が一流出した場合に備えた健康対策を用意しておくことです。どの企業にも、この3段階を順守した生産活動を行う責任があります。

環境問題において「予防原則」が最も大切な考え方です。一度損なわれた環境は決して元に戻ることはありません。取り戻したように見えても、それは似て非なるものです。健康被害により死んでしまった人はもう戻らないのです。

4大公害病からもう数十年がたち、忘れている人も多いかと思いますが、いつまた同様の事件が起こるとも限らないのです。環境はたやすく損なわれ、損なわれた環境では、私たちは生きてはいけないということを忘れないようにしましょう。

温暖化と氷

近年の地球規模の温暖化により、極域地方の海氷や氷河の氷が溶け出していると言われております。日本でも、毎年冬にオホーツク海や北海道沿岸で見られていた流氷の減少や、時期のズレなどが報じられています。温暖化による影響は、たんに氷が解ける、というものだけなのでしょうか。そうではありません。もっと深刻な影響があるのです。

 直接的な影響として、流氷や氷山が融けることにより、ホッキョクグマやアザラシなどの生息域が減少します。それにより、生態系への影響が懸念されております。

また、一般的に流氷などが融けることで海面上昇につながると言われておりますが、実はこれは正しくありません。

流氷が融けても直接海水面を上昇させることはないのです。質量保存の法則により、海水表面より上にある氷とその同容積の水の質量は変わりませんので、海水面の高さに影響は与えません。

しかし、温暖化による水の熱膨張が生じるので、結果的に海水面が上がることになります。実際に1900年―2000年の間で海水面が19㎝上昇したという研究結果もあります。

世界にはツバルやベネチアといった、海抜の低い国では非常に差し迫った問題としてとらえられています。
 液体の水は比熱が大きく、太陽熱を取り込むと保温する性質があります。そのため、氷だった部分に水が存在することで、太陽熱をより多く吸収してとどめることになり、さらに温暖化に拍車をかけてしまいます。

このことによりさらに氷が解け…という風に悪循環に陥ってしまうのです。このような、結果がさらに原因を推し進めるような機構を「正のフィードバック」といいます。

 大きな氷が融けることにより、北極海周辺の航行ルートも変更を余儀なくされています。しかし、これをチャンスととらえる見方もあります。

北極には化石燃料資源が存在すると考えられており、これまでは分厚い氷に阻まれて調査・発掘を行うことができませんでした。
温暖化により氷の層が薄くなったことで、これらの資源を活用できる可能性が広がったのです。しかし、新たな化石資源を使うことがさらなる温暖化を引き出し、さらに大きな影響が出てしまう可能性もあると言えます。ここでは地球の将来を左右する人間のモラルが試されているのです。

 温暖化は確実に地球規模で様々な問題を引き起こします。我々日本人にとっては実感しづらいですが、海抜の低い国や北極に住む原住民の人々にとって、氷の融解というのは生活を左右する重要な問題なのです。

知られざる「マイクロレイヤー」の謎

海面のごく表層にはマイクロレイヤーという領域があります。この領域では、他の海水よりも多くの有機物が含まれています。また、大気中との物質循環も盛んに行われており、大気と海水の循環におい得て大きな役割を果たしていると考えられています。現在も未知な部分が多く、研究が進められています。

皆さんは、「マイクロレイヤー」という言葉を御存知でしょうか?マイクロレイヤーは近年環境分野において大きな注目を集めています。日本海で真冬のシーズンに見られる「波の花」という現象があり、この現象もマイクロレイヤーが深くかかわっているとされています。では、このマイクロレイヤーとは何なのでしょうか?

 マイクロレイヤーとは、海洋表面のごく薄い層(0.5mm以下)に形成される層のことです。マイクロレイヤー中には多量の有機化合物や微生物が含まれており、他の海水層とは異なる領域とされています。

大気と接している層でもあるため、大気中との物質のやり取りも盛んに行われ、物質循環において大きなポイントとなります。大気中の成分が、波と共に海水中に侵入し、マイクロレイヤーからは粒子や微生物が微小な粒子(エアロゾル)として大気へと流出します。エアロゾルは気体ではないものの、風によって運ばれ、広範囲に拡散していきます。

 マイクロレイヤーがなぜ注目されているかと言いますと、海洋中に存在する有害化学物質も多く含んでいるからです。そして、上述したようにマイクロレイヤーでは大気中との物質のやり取りが盛んに行われています。

つまり、海水中に流出した有害物質はエアロゾルとなり、世界中に拡散する可能性がある、ということなのです。やっかいなことに、マイクロレイヤーは常に表層に均一に分布しているわけではなく、その分布に偏りがあるのです。

また、表層生物の生成物や調査船の放出する界面活性剤の影響を受けやすいため、厳密な調査を行うのが非常に難しいとされています。そのため、マイクロレイヤーの科学的な研究知見は乏しく、これからの研究が期待されているというのが現状です。

世界中で進むサンゴの再生活動とは

 サンゴ礁は海の生物の住処になるだけでなく、防波や生活資材の提供など、我々の生活にも大きな役割を果たしています。このサンゴ礁が地球温暖化や海洋環境の悪化により、急速に減少しているのです。現在、サンゴ礁の減少を食い止めようと世界中でサンゴ礁の再生プロジェクトが進行しております。
 日本では、「美ら海振興会」という団体が沖縄のサンゴ礁保護に力を入れています。国内最大級のサンゴ礁植え付けイベントを企画おり、一般の人の参加を促しています。植え付けのサンゴ礁は、陸上の養殖施設で育てたサンゴをドナーとして使っております。また、サンゴにもさまざまな種類があり(エダコモンサンゴ、ヒメマツミドリイシなど)成長スピードも異なるため、植え付け時期によりサンゴの種類を変えています。これにより、単一なサンゴ礁でなく多様なサンゴから構成されるサンゴ礁を目指しています。植え付け後も、個体記録を取り、定期的に生存確認を行ったり、天敵であるオニヒトデの駆除などを行っています。
サンゴ礁を直接増やす活動だけでなく、海中のごみの回収、浜辺の清掃といった環境改善のほか、募金や啓もう活動なども行っています。こうした地道な活動が我々の子孫の代におけるサンゴ礁の復活につながるのです。
近年では、DNA解析を利用した保護活動も進んでいます。サンゴ礁のゲノムを解析することで、海域によって異なるグループに分類されることが分かりました。これにより、海域ごとの適性を考慮した養殖活動が行えるようになり、養殖したサンゴが根付く確率を高めることができるのです。また、褐虫藻の役割がより正確にわかってきたため、死滅や白化のメカニズムが徐々に明らかにされてきました。近い将来、未然に褐虫藻の消失を防いだり、白化したサンゴを元に戻す方法が見つかるかもしれません。
沖縄以外にも、オーストラリアや北アメリカといった地域でもサンゴ礁の減少が問題となっています。地球温暖化は世界規模で進行している問題ですので、今後もサンゴ礁の保護活動は世界中で継続して行う必要があると言えます。海を直接汚さなくとも、日ごろの何気ない活動がサンゴ礁に、ひいては海の生物全体に影響を及ぼす可能性があるのです。逆に言えば、我々がエコな生活を心がけ、二酸化炭素の排出を抑えることができれば、結果的にサンゴ礁の保全に貢献することになります。将来も美しいサンゴ礁の景観を楽しむためにも、一人ひとりが今できることを始める必要があるのです。

世界中の海からサンゴが消えている!?

皆さんはサンゴ礁のことをどれくらいご存知でしょうか?沖縄とかオーストラリアのきれいな海の中にあるゴツゴツしたやつ、というぐらいのイメージはあるかもしれませんね。最初にサンゴ礁について、軽くご説明をしていきます。
 サンゴ礁は植物のような鉱物のような見た目ですが、実はれっきとした動物なのです。「サンゴ虫」という動物で、クラゲやイソギンチャクなどと同じ刺胞動物に分類されます。サンゴ礁は暖かい浅瀬に主に生息し、自身が作り出した石灰の骨格の中に褐虫藻と共生しています。共生というのは、異なる種類の生物が互いに助け合いながら生きていくスタイルのことで、褐虫藻はサンゴ礁から住処をもらい、サンゴ礁は褐虫藻が光合成で生み出した物質をもらっているわけです。
 サンゴ礁は海の中で重要な役割を果たしているだけではなく、我々の生活にも恩恵を与えてくれます。サンゴ礁は硬い骨格を形成するため、高波の力を弱めてくれる自然の防波堤となります。サンゴ礁がなくなってしまった海岸では、人工的に防波堤を築く必要があります。また骨格を建材として用いたり、食糧・医薬品として利用されることもあります。研究の進んできたサンゴ礁ですが、未だにわかっていないことが多く、教育・研究分野でも利活用されています。
 このように海の生物にとっても、我々にとってもありがたい存在であるサンゴ礁ですが、近年サンゴ礁の縮小が進行し、世界中で問題となっています。サンゴ礁はデリケートな生物で、海水温が上昇することでストレスを受けてしまい、「白化」や死滅につながります。白化とは、褐虫藻が逃げてしまったサンゴの骨格が空けて、白く見える現象のことを言います。地球全体の温暖化現象により、石垣島やオーストラリアのサンゴ礁の白化が進行しているのです。
 また、生活排水などにより海水中の富栄養化が進むことで藻類が海面を覆い、褐虫藻が光合成できなくなるという問題もあります。上述したように、サンゴ礁と褐虫藻は共生しているため、褐虫藻が光合成できなくなると、サンゴ礁も栄養が取れずに死滅してしまいます。サンゴ礁の形成には長い時間が必要です。現在世界中でサンゴ礁の植え付け活動が行われていますが、破壊のスピードを抑えないといつかは絶滅してしまうでしょう。
 サンゴ礁は景観としても美しく、ほかの生物にとっても非常に大切な存在なのです。遠い海のサンゴ礁を守るためにも、我々の生活の足元から見つめなおしてみましょう。

水の循環における海の役割

 常に満ち満ちているように見える海でも、目に見えないレベルで常に循環を繰り返しています。太陽の熱によって海の表面の水が蒸発し、上昇気流によって気温の低い高さまで押し上げられ、雲に凝縮します。雲から降り注ぐ雨や雪の大部分は海に直接降りますが、一部は陸地へと降り注ぎます。陸上に落ちた雨は地上表層を流れる表層水となったり、地中に吸い込まれる(浸透)ことで地下水になります。これらの水は長い距離を移動し、やがては海へと戻るのです。
 この水の循環の中で、我々人間は一部の水を生活に利用し、排出しています。産業革命以前は、利用する水の量も使い道もたかが知れていたため、使用後の水をそのまま排出しても環境に大きなダメージを与えることはありませんでした。しかし、産業革命以後は工業化が急速に進み、使用する水の量も水に含まれる汚染物質の量も比較にならないほど増加しました。その結果、循環する水が汚染されてしまい、地上の生物すべてに影響を与えることになりました。
 水はすべての生物にとってなくてはならない資源であり、様々な形態で体内に取り込まれます。この水が汚染されることで、海鳥が住めない環境になったり、植物の生育に影響を与えているのです。石油タンカーの座礁による原油流出といったわかりやすい汚染もありますが、多くの汚染は汚染源と影響が出る場所・タイムスケールが異なりますので、原因を追究するだけでも非常に困難です。工場から排出された重金属が雨水とともに地下にしみ込み、地下水となった後、井戸水として飲んでしまった地域では深刻な健康被害が出ております。
 このように水は常に循環するため、海に直接汚染をもたらさなければ大丈夫だろう、という考えは間違いなのです。あなたの家の台所で流された汚れも、下水道を通って化学処理を受けた後、海に排出されます。多くの化学物質や汚れは浄化されますが、中には処理できない物質もあります。そういった物質を流してしまうとそのまま海へと排出され、水の循環を通じて、いつの日かあなたのもとへ帰ってくるのです。
 自分の排出したものが、どういう経路を通過していくのかを常に考える必要があります。大局的な視点を持つことで、海に行って環境保護活動を行わなくても、環境の悪化を防ぐお手伝いをすることができます。逆に言うと、目の前の小さなことを見逃せば、それがいつか大きなしっぺ返しとなって帰ってくる可能性もあるのです。今日から水の循環を意識しながら生活してみてはいかがでしょうか。

海洋環境を効率よく調べられる「ペレットウォッチ」とは?

海の環境と一言で言っても、世界中の海をくまなく調べることはできません。そこで効率的に、かつある程度の正確さを以って環境を調べる手段が必要になってきます。その方法として考えられたのが「ペレットウォッチ」という手法です。
ペレットとは、「プラスチックレジンペレット」のことで、プラスチックの原料となる物質のことです。ペレットは輸送中にこぼれたり、プラスチック製品が欠けたりすることで海洋に流出し、広範囲を漂います。漂っている間に水の中に含まれる化学物質、特に有機化合物が表面に付着し、蓄積していきます。やがて、これらのペレットは世界中の海岸に行きつき、そこに留まるのです。このペレットを分析することで、海洋中に含まれる汚染物質の濃度や分布がわかる、というわけです。
この方法のメリットとして、
① 誰でも採取が可能
② 世界中の海岸からデータを集めることができる
③ 低コスト
といったことが挙げられます。レジンペレット自体は1㎝弱のただのプラスチックの粒です。採取する際も特別な道具を必要とせず、ただ手で拾って、研究機関へ送付するだけで完了なのです。この手軽さゆえに、世界中の人に協力を求めることができるため、上に挙げたメリットの②と③につながるのですね。世界中の海岸からデータを集めようとすると、通常は莫大な費用と人手、手間などがかかります。しかし、ペレットウォッチの手法で有れば、研究者自身が現地に行くことなくデータを集めることが可能なのです。
 ペレットウォッチでポリ塩化ビフェニル(PCBs)という有害物質が、アメリカやヨーロッパといった地域で高濃度であることが判明しました。PCBsは高度経済成長の際に用いられていた物質で、毒性の高さから使用が禁止されていました。しかし、使用されなくなってからも海水中にずっと残留し、海の生物に影響を与えている可能性が指摘されています。この事実もペレットウォッチがなければ見過ごされていたことでしょう。
 日本の海岸にももちろんレジンペレットは漂着しています。日本も先進国であり、高度経済成長期には大量の化学物質を海洋中に放出していたと考えられます。レジンペレットをいくつか拾って研究機関に送るだけで、日本周辺の汚染状況を調べる研究のお手伝いができます。送付先は、日本の東京農工大学です。ぜひあなたも海に行った際には、ほんの数分でいいのでペレットを拾ってみてください。それが、世界中の海の汚染の現状を明らかにする大切なプロセスとなるのです。

プラスチックごみの行方は?

我々の生活の身近にある「プラスチック」。
このプラスチックは、生活を豊かに暮らしやすくしてくれる便利なものですが、自然界に捨てられるとたちまち環境への脅威となります。

特に海に捨てられたプラスチックは、分解されることなく長期間広範囲に漂います。
浮遊したプラスチックは海の生き物の目に留まりやすく、餌と勘違いしたウミガメや海鳥が飲み込んでしまうのです。
プラスチックは本来自然界にある成分ではないため、生物の体の中に取り込まれても分解・消化されず蓄積していきます、その結果、胃袋が満杯になった生き物は餌を食べることができずに死んでしまいます。また、プラスチックが食道をふさぎ、直接死に至らしめることもあります。

あの広い海に少しプラスチックが浮いてるぐらいなんだ、と思う方もいるかもしれません。
しかし、最近の調査によって、海鳥の90%以上がプラスチックを飲み込んでいるという事実が判明しました。
この調査はオーストラリアで行われたもので、ビニール袋やペットボトルの蓋、衣類の合成繊維といった様々なものが海鳥の身体の中から見つかったそうです。

プラスチックの生産量は11年ごとに倍増していると言われており、この爆発的な生産量の増加に伴い、ゴミを飲み込む海鳥の数も増加しています。
1960年には、胃の中からプラスチックが見つかる海鳥の割合は5%未満だったものが、1980年には一気に80%に跳ね上がっていると報告されています。
最近の別の研究により、海鳥の生息数も減少していることが判明し、1950年から2010年までの60年間で、海鳥が67%まで減少したと見積もられました。
今後も、プラスチックの流出が止まらなければ、海鳥は絶滅においやられるでしょう。

もちろん、鳥類だけでなく、イルカや魚などもプラスチックの影響を受けています。
我々が軽い気持ちで捨ててしまったプラスチックが、遠く離れた場所で生き物を実際に殺しているのです。
これを食い止めるには、まず日ごろからプラスチックは確実に分別し捨てましょう。
また、海に行った時には、目に付いたごみはできるだけ広い、自分たちのゴミは持ち帰ることです。
海水浴やバーベキューなどは楽しいレジャーである半面、一人ひとりのモラルが試される遊びでもあるのです。

あなたの行動が今後の海の生き物の未来に影響を与えることを忘れないでください。