船底塗料とその危険性

船舶には生物の付着を防ぐために、底に防汚塗料というものが塗られています。フジツボやカキ殻が船底に付着すると、抵抗の増加による燃料の消費や、スクリューへの巻き込みによる破損の可能性街があります。これらのリスクを抑えつつ、船底のクリーニングコストの軽減と言った目的から、防汚塗料は世界中で利用されています。しかし、船底は直接海水に直接海水と触れているため、塗料成分が海水に溶け出すことが懸念されています。
代表的な防汚塗料の成分の一つにトリブチルスズというものがあります。トリブチルスズは、スズを中心にして炭素と水素が結合した有機化合物です。ヨーロッパで貝類やカキの養殖に悪影響をおよぼすことが判明したことから、このトリブチルスズの危険性が1970年台の終わりから認識され始めました。トリブチルスズはイボニシのオス化を引き起こす環境ホルモンとして作用が知られています。また、トリブチルスズをはじめとする環境ホルモンは生物に蓄積しやすく、分解されにくいため、世界中で規制がなされたあとも長期間残留してしまいます。トリブチルスズが規制されたあとは、代替品として銅や合成有機化合物などの新製品の開発が行われました。イルガロールやジウロンなどがその代表です。しかしこれらの物質もバイオサイド(人体、動物、環境に悪影響を及ぼすおそれのある物質)を含むため、現在では使用されていません。
これらの塗料の代替品として、シリコン塗料やバイオサイドフリー塗料などが開発されました。実験によると、塗料がダメージを受けないように管理をすれば、塗布したあと60ヶ月は効果が持続することが確認されました。最近では、一部の外航船および観光船(稼働率が高く船速の速い船舶)の船底やプロペラなどに塗装され、高い防汚性能が評価されつつあります。しかし、塗装作業が困難でコストが高い等の欠点があります。調査により、有機スズや他のバイオサイドを含む塗料の代替品として有望なものがいくつかあることが分かりました。全ての塗料の内、“1つで万能”な製品はなく、船舶の運航条件に合わせて、適切な防汚システムを導入するのが良いことが分かりました。
空輸や陸路による輸送のみならず、海路も輸送経路の大部分を占めています。すべての船に塗られている防汚塗料が生物に危険性のある物質か否かという問題は、極めて重要なものであることがわかります。持続可能な発展を続けるためには、一つ一つの化学物質を精査し最も環境影響の少ない物を選ぶとともに、実用可能なレベルまでコストや手間を抑えるということが必要です。困難な工程ですが、将来の世代のことを考えると決して省くことのできないものなのです。